2014年の春、中村 葵な路面店を借りた。場所は住宅街の外れで、最寄り駅から歩いて12分かかる。看板も出さず、SNSも始めず、最初の3ヶ月は近所の人が数人来ただけだった。それでも葵は毎朝市場へ行き、その日の花を仕入れ、店を開けた。花屋というより、花を置いている部屋、という感じだったと本人は言う。
転機は2016年の秋だった。近くのレストランのオーナーが、テーブルに飾る花を頼みに来た。毎週木曜日に届けるようになり、そのレストランに来た客が店を訪ねてくれるようになった。口コミだけで少しずつ広がり、2018年には初めてブライダルの依頼が入った。式場の大きな装花ではなく、友人の小さな結婚式のテーブルフラワーだった。その仕事が終わったあと、葵は「これが自分のやりたいことだ」と思ったという。大きな式場の仕事は今も断っている。